イーロン・マスクのすすめ

最高の男、イーロン・マスクについてのブログ

イーロン・マスクはなぜトンネルを掘るのか

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イーロン・マスクがThe Boring Companyという会社をつくりました。これで彼が持っている組織は、1)SpaceX2)Tesla3)OpenAI4)Neuralink、そして5)The Boring Companyの5つになりました。そこで、今回はイーロン・マスクがThe Boring Companyでどんなことをやろうと考えているのか見ていきたいと思います。まずは、The Boring Company以外の4つの組織について簡単にご説明しましょう。

 

1)SpaceX: 人類を他惑星に居住する生物にするため、再使用ロケットをはじめロケットの開発・製造・打ち上げをおこなっている

2)Tesla: 持続可能なエネルギーの到来を早めるため、電気自動車、バッテリー、太陽光発電用タイルの開発・製造・販売をおこなっている

3)OpenAI: 人工知能(AI)による危険性を排除するため、人工知能の研究開発をおこなっている

4)Neuralink: 人間の脳とコンピュータをつなぐため、 BMI (ブレイン・マシン・インターフェース)の研究開発をおこなっている

 

どれも壮大なスケールの事業ですね。イーロン・マスクは人類にもっとも影響を与える分野に従事したいとの思いから、次々にイノベーションをおこしてきました。その過程・結果として、これらの組織が存在するわけです。もちろんThe Boring Companyもその1つ。では、The Boring Companyがどんな会社かというと:

 

5)The Boring Company: 交通渋滞を解消するため、トンネルを掘る掘削機を研究開発・製造し、トンネルを整備をおこなう

 

いかがでしょう。他の4つの組織と比べるとなんだか地味な気がしないでもないですね。でも、じつは他の組織に負けないくらいスケールの大きな会社なのです。

 

なぜトンネルを掘るのか

そもそも、なぜ交通渋滞が発生するかというと、人が移動するときに利用できるスペースが少ないからです。(もちろんそれ以外にも様々な要因はあるにせよ、根本的には、渋滞は移動スペースが許容量を超えた場合に発生します)

 

なので、イーロン・マスクは移動スペースを増やすため、交通インフラを3D構造に変えてしまおうと考えています。例えば、マンションやオフィスビル等の人が居るスペースはすでに3Dになっていますね。高い建物は数十階という高さの構造をもっています。にもかかわらず、移動のときは地面に降りてきて2Dの移動スペースしか利用していない。3D空間に分散していた人々が移動の際に2Dへ凝縮されるわけです。渋滞の発生が容易に想像できますね。そこで、移動スペースもマンションやビル等と同じように3D化して、より多くのスペースを確保しようという発想に至ります。イーロン・マスクらしく、問題を解決するときはいつもその問題のもっとも本質的なところを突いてきます。

 

さて、交通インフラを3Dにするには2通りのやり方があります。1つは空飛ぶ車。上空を活用するわけですね。しかし、このやり方には問題点が複数あります。天候に影響をうけること、騒音が発生すること、そして通行人の不安を増大させること。通行人は空飛ぶ車が事故や故障で落っこちてこないか常に不安にさらされています。

 

交通インフラ3D化のもう1つのやり方がトンネルです。地下を活用するのです。トンネルには空飛ぶ車が抱える問題点が存在しません。天候の影響はうけませんし、一定の深さであればトンネル建設の際の騒音もない。また、交通量の増大に対しても、階層を深くし、トンネルを増やすことで実質的には無限の移動スペースを確保できます。

 

以上の理由から、イーロン・マスクは「交通渋滞の解消」(=交通インフラの3D化)ために「トンネルを掘る」ことを選択しました。

 

トンネルをアップグレードする

トンネルによって交通渋滞の解消が可能だとすれば、なぜ十分な数のトンネルが存在しないのでしょうか。イーロン・マスクによれば、トンネル掘削コストに理由があるそうです。例えば、LAの場合は1マイル(1.6km)あたり10億ドル(1114億円)という膨大なトンネル掘削コストがかかるとのこと。たくさんのトンネルを掘るため、トンネル掘削のコストを10分の1以下にする必要があると彼は考えます。

 

そして、このコストの問題の解決策として、トンネルの直径を小さくすることが有効だとイーロン・マスクは語ります。現在、米国のトンネルは1レーンで28フィート(8.5m)の直径が必要とされています。これは事故の際の緊急車両の通行&内燃機関(ガソリン車やディーゼル車)が排出するガスの換気のためです。

 

そこで、電動のスケートの上に自動車を載せ、自動車ごとその電動スケートをコントロールするというアイデアが採用されました。動画が公開されているのでご覧ください。


The Boring Company | Tunnels

 

電動スケートは内燃機関ではないため、有害なガスが排出されません。また、各スケートのコントロールが可能になるので、事故もほぼ発生しないと考えていいでしょう。このアイデアによって交通の制御とゼロエミッションを達成し、トンネルの直径を14フィート(4.2m)まで小さくすることができるそうです。直径が半分になると大幅に断面積が減るので、最終的にコストが10分の3~4ほど削減できる予定とのこと。

 

さらに、既存のテクノロジーの流用で掘削スピードもはるかに向上できます。通常、トンネルを掘削する場合は作業割合として掘削に50%、トンネルを支える構造物の建設に50%であり、それらは交互におこなわれます(同時ではない)。これを、トンネルを支えるための構造物を建設しながら掘削できるよう改良することで、継続的な掘削が可能になるそうです。現在のトンネル掘削スピードはカタツムリの移動速度に負けてしまいます。カタツムリの方が14倍は速いとのこと。The Boring Companyはカタツムリに勝つことを目標に掘削スピードをあげていくそうです。

 

また、通常はトンネルを支えるためにコンクリートが用いられますが、The Boring Companyはコンクリートの代わりに掘り出した土を利用することで、環境破壊の抑制とコスト削減も狙っています。世界の温室効果ガス排出の4.5%を占めるのがコンクリートの生産です。実現できれば非常に効果的でしょう。

 

上記に加え、ディーゼルが主流の掘削機の電動化および自動化もおこなうそうです。イーロン・マスクによると、米国ではトンネル掘削はほとんど研究開発が進んでおらず、過去50年間生産性が向上していない分野とのこと。掘削機の研究開発を進めることで、あらゆる角度から合理化を施し、コストを下げ、交通インフラの3D化を達成していくわけですね。SpaceXやTeslaの例からわかるように、ハードウェア・ソフトウェア両面において、イーロン・マスクはアップグレードの達人なのです。きっとトンネル掘削機・技術はすさまじい進化を遂げるでしょう。

 

そして、極めつけはトンネルを利用したHyper loopの運用です。Hyper loopはイーロン・マスクが考案した真空チューブ内を高速移動するという新しい交通手段で、SpaceX主催で学生のコンテストを開催するなど、実現に向けて動いているプロジェクトです。(イーロン・マスクが直接関わっていない会社も多く開発に加わっています)

www.youtube.com

 

Hyper loopでは真空チューブの建設が必要です。トンネルは地下水面の圧力に耐える必要があるので、必然的に内部を真空にしても壊れることがありません。なので、Hyper loopのチューブとしてトンネルを利用できるわけです。ここにきて、イーロン・マスクはHyper loopをも想定に入れた交通インフラの大改革を断行するつもりなのです。

 

このように、イーロン・マスクSpaceXやTeslaで確立した方法論をトンネルに適用することで、トンネル掘削機をアップグレードし、交通インフラをアップグレードし、新しい交通機関であるHyper loopをインテグレートしていきます。SpaceXが地球宇宙間の移動コストを削減するように、Teslaが持続可能なエネルギーの普及を進めるように、The Boring Companyも地球の交通インフラを壮大な規模でつくりかえようとしているのです。The Boring Companyもまた、とてつもないスケールの会社だったということではないでしょうか。

 

参考

FAQ — The Boring Company

www.ted.com