イーロン・マスクのすすめ

最高の男、イーロン・マスクについてのブログ

イーロン・マスクがギガファクトリーに自信満々な理由

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ギガファクトリーとはテスラネバダ州に建設中のその名の通り超巨大な工場です。テスラ電気自動車に用いているリチウムイオン電池(バッテリー)を大量生産する工場で、フル稼働で年間電気自動車50万台分のリチウムイオン電池を生産できる能力を備えるとのこと。これは2013年に全世界で生産されたバッテリーの総量を上回るほどの量です。
 
テスラがギガファクトリーに投資した額は約6000億円。そして、約6500人を雇用する予定です。フル稼働は2020年までにはおこなわれるそうです。ギガファクトリーでリチウムイオン電池を大量生産し、規模の利益を効かせ、電気自動車の価格を下げて電気自動車を普及させる。長期的な戦略でテスラは膨大な金額をギガファクトリーに投資しています。
 
ところで、イーロン・マスクテスラを始めたきっかけは友人に連れられてAC Propulsionという会社を訪れたことです。そこで高速で走行距離の長い電気自動車のプロトタイプを見たイーロン・マスク。バッテリー技術の発展のスピードが彼の予想を超えていたことに驚き、テスラの創業を決めたのです。
 
つまり、テスラが誕生したのは近年のバッテリー技術の発展速度がイーロン・マスクの予想を超えて飛躍的に向上していたおかげとも言えます。
 
さて、ここでようやく本題ですが、イーロン・マスクはギガファクトリーほどの大規模なプロジェクトをすすめることに恐怖を感じていないのでしょうか。
 
リチウムイオン電池を生産するのがギガファクトリーです。バッテリー技術の発展によってリチウムイオン電池が過去のものになる可能性だってありそうです。話題になったアルミニウム電池や燃料電池など実際に様々な技術が発展しています。
 
イーロン・マスクの予想を超えて発展を遂げた分野であるバッテリー技術。それだけ変化の激しい分野において、大規模な投資が本当に成功するのか不安になるのが当然ではないでしょうか。
 
Baron Investment Conferenceでイーロン・マスクからその答えが明かされました。カンファレンスで語られた内容を引用してご紹介します。
 
現時点で、私たちは世界中のバッテリー技術にたいして極めて深い理解があります
私たちは世界中でおこなわれている約60のバッテリーを改良する努力を把握しています
私たちはそれらすべてに5段階評価をつけました。5は私たちがビジネスにおいて協力関係を築くべきもの、1は完全なる嘘っぱちです
 
ということで、テスラは世界中のバッテリー技術の開発研究を把握していて、独自に5段階のレーティングをつけているわけですね。ちなみに、現在のところ4や5の評価の技術は存在しないとのことです。
 
つまり、様々なバッテリー技術が話題になりますが、どれも現段階では大したことはないとテスラは評価していると言い換えてもよさそうです。そして、テスラが高評価を与えるほどの技術があれば協力関係を築く柔軟性もある。
 
イーロン・マスクが自信をもってギガファクトリーの建設をすすめるのは、テスラが常に世界中のバッテリー技術を(ほぼ)完全に把握していて、この分野で最先端の状態をキープできるからということでした。
 
カンファレンスの動画はこちら。
 

参考

火星への核攻撃は人類を救う?

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イーロン・マスクは人類を火星に移住させるために奮闘しています。スペースXで宇宙事業をおこなっているのもそのためです。

火星は(地球以外の)他の太陽系の惑星にくらべると地球に似た環境をもつ星なので、人類の移住先としてもっとも有力な候補だからです。

 

とは言っても、火星が非常に過酷な環境であることは疑いようがありません。南極よりも寒く、アリゾナ砂漠のような地表ですし、呼吸はできません。生身で長時間外にいると太陽の放射線で死に至ります。

そこで登場するのがテラフォーミング人為的に火星を地球環境に近づけようというアイデアです。

 

TV番組に出演したイーロン・マスクは火星のテラフォーミングについて質問をうけました。このイーロン・マスクの答えが非常に話題となっています。

イーロン・マスクによると、火星のテラフォーミングには「ゆっくりやる方法」と「急いでやる方法」の2つがあるそうです。そのうち、彼の提案した「急いでやる方法」はじつに驚くべきものでした。

 

原子爆弾を(火星の)極地に投下することですね。

Elon Musk wants to nuke Mars – WTF? | Alphr

 

びっくりしたホスト役のColbertは思わず「なんて悪者なんだ!」と叫びます。いくらイーロン・マスクが自分で合理的な考えだと思っていても、周囲の人間からすると突拍子もない発言です。驚くのも当然ですね。

イーロン・マスクを追いかけていると度々このような場面を見かけます。彼は合理的に考える人物なので、思考方法自体に他者との乖離はそれほどありません。誰でも合理的に考えようとするでしょう。

ところが、彼の場合は合理的思考がきわめて徹底しているうえに思考のベースとなる知識量が膨大なので、いくら考え方が納得できるものであっても、彼の口からは意外な結論が飛び出すのです。

それに、たとえ同じ結論にいたったとしても普通なら発言を躊躇するようなことをイーロン・マスクは平気で言ってしまいます。

今回の発言はその典型的な例と言えるでしょう。

 

さて、イーロン・マスクは今回の発言で何を言いたかったかというと、火星のテラフォーミングをおこなう手っ取り早い方法は、原子爆弾を爆発させて極地にある氷を蒸発させるということです。氷を蒸発させることにより火星の気温を上昇させる。つまり、火星を地球に似た環境へ導くことができるわけです。

火星のテラフォーミングのカギは火星の気温の上昇にあるのです。

 

では、実際のところこの刺激的なテラフォーミングの方法は専門家にどのように受けとめられているのでしょうか。

 

コロラド大学のBrian Toonは以下のように述べます。
※彼は1991年に火星のテラフォーミングに関する論文を書いた人物です。

(火星を)地球のような状態にできる可能性はあるかもしれませんが、乗り越えるべき壁はたくさんあります。爆弾を爆発させることは良い(アイデア)とは言えません。

Elon Musk wants to nuke Mars – WTF? | Alphr

 

つづいて、インペリアル・カレッジ・ロンドンのMatthew Gengeはこう語ります。

できるだけ早い火星のテラフォーミングを望むなら、その方法は(火星の)氷を蒸発させるものとなるでしょう。しかし、核兵器を使用して十分な量の氷を蒸発できるとは思えません。

Elon Musk wants to nuke Mars – WTF? | Alphr

 

史上もっとも巨大な核兵器ツァーリ・ボンバ。ソビエト連邦が開発した水素爆弾です。水素爆弾なのでイーロン・マスクが言っていた原子爆弾とは違いますが(水爆は核融合爆弾で原爆は核分裂爆弾)、その威力は原子爆弾を遥かに凌ぎます。

火星のテラフォーミングにはこのツァーリ・ボンバをもってしても不十分だそうです。火星をテラフォーミングするには膨大な量の核爆弾が必要になるということですね。それに、人間にとって有害な放射線もでます。

しかも、じつはこの方法、結果的に火星を冷やすことにもなりかねないのです。核爆弾の爆発により大量の粉塵が舞い上がり、太陽光を遮断してしまうおそれがあるからです。

 

というわけで、火星のテラフォーミングを急ぐなら原子爆弾を投下すれば良いというアイデアはかなり議論の余地があるということですね。それでも大変ユニークな意見であることには間違いありません。

 

後日イーロン・マスクTwitterでこの件について触れていましたので、そちらのツイートをご紹介しておきます。

 

ところで、火星に核爆弾を投下「すべき」だと言ったわけではない。ただ選択肢を並べただけなんだ・・・

 

参考

www.alphr.com

waitbutwhy.com

人工知能兵器について知っておくべきこと

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アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれた国際人工知能会議でイーロン・マスクやスティーブン・ホーキングら有識者・著名人が署名したオープンレターが公開され話題になっています。オープンレターは人工知能兵器の開発競争に警鐘を鳴らすもので、Future of Life Institute(FLI)という団体から提出されました。

Future of Life Institute(FLI)はボランティア運営の研究支援団体です。ボストンに拠点を構え、人類の存続を脅かす危機を緩和するために活動しています。マサチューセッツ工科大学の宇宙学者マックス・テグマークやSkypeの共同創業者Jaan Tallinnらによって創設されました。イーロン・マスクが約12億円を寄付したことでも有名です。

 

人工知能兵器は自律型兵器とも呼ばれ、人間の意思決定を介在させずに機械が自分で判断してターゲットの選定から交戦までをおこなう兵器のことです。オープンレターの定義は以下です。

自律型兵器は人間の介在を受けずにターゲットを定めて交戦します。たとえば、武装したクアッドコプターで、事前に設定された条件を満たす人間を探し出して排除できるというようなものです。人間がターゲット決定をおこなう巡航ミサイルや遠隔操作ドローンは含みません。

武装したクアッドコプターのイメージはこんな感じです。


Flying Gun - YouTube

簡単に言うと、自分で勝手に敵を見つけ出して銃を発射する殺人マシーンのことですね。

 

このような自律型兵器の開発状況について、オープンレターではこのように述べられています。

人工知能(AI)技術は、実際には適法ではないにせよ、数十年以内と言わず数年以内にはそのような(自律型兵器)システムの開発に至る段階にきています。そして、火薬、核兵器に次いて、軍事における第三の革命と表現されるでしょう。

 

もし、人工知能兵器である自律型兵器が実現した場合、どのような未来が待っているのでしょうか。

歴史的に見れば、兵器の進化は社会の変革につながります。数百年前、封建社会は甲冑とお城が強大な武力であり、支配者がその武力を用いて民衆を支配する社会システムでした。

その後、兵器の技術革新が起きます。火薬の登場です。この火薬革命によって社会が大きく変わりました。武士や騎士といった剣と甲冑を用いた戦闘のプロから、ある程度の訓練をうけた大勢の民衆へと軍隊構成が変わったのです。

軍隊の構成が民衆依存になるにつれ、指導者の民衆への依存度も高くなり、当時の社会で現在の国家体制に近い代議制が形成されはじめました。

近年、より近代的な兵器の登場で戦争は高度化。軍事行動に専門性が要求され、徴兵制を採用する国は少なくなりました。

このように、兵器の発展にあわせて社会は変貌していくものです。

そして、現在、まったく新しい兵器である人工知能兵器の実現が迫ってきています。人工知能兵器つまり自律型兵器が登場すれば、軍隊の構成から民衆どころか人間自体が排除されます。機械が判断し、戦闘する。すべての軍事行動が兵器だけで完結するのです。非常に大きな兵器革命と言えるでしょう。

大きな兵器革命は大きな社会の変化を引き起こします。今まで人類が体験したことのない社会が到来するわけです。単純に新しい種類の兵器が登場するだけというものではありません。歴史を振り返ればわかるように、自律型兵器が誕生すれば、それにあわせて社会システムが大きく変わることでしょう。

 

幸いにも現在は完全な自律型兵器の開発には至っていません。自律型兵器にもっとも近い兵器は遠隔操作の無人機でしょう。ただし、このような遠隔操作の無人機は自律型兵器誕生の前触れであることは間違いないのです。

たとえば、無人機から送られてくるデータの量が年々増加しているため、情報分析に人工知能の力が必要になってきています。データは攻撃対象の認識・選定に用いられる(ことが多い)ため、人工知能による自律的なターゲットの設定がおこなわれるようになるでしょう。

さらに、電磁波による遠隔操作を妨害などを避けるため、無人機はできるだけ自律的に行動することも求められます。

また、自律型兵器は人間と違って匿名性を維持しやすいので、小国家、犯罪組織、民間企業などの小規模な組織にとって非常に有効な兵器となります。人間の国籍や所属を隠すことよりも、自律型兵器がどこで生産され誰に購入されたのか隠蔽することのほうが簡単だからです。これによって、軍事的強者による報復を回避することが可能になります。

現代社会において、私たちは様々なデータに囲まれて生きています。携帯電話の位置情報からSNS、交通機関の移動データなど。これらのデータはすべて人工知能兵器にとって非常に有益な情報となります。攻撃目標の選定から、追跡、交戦のタイミングなど軍事行動に必要な情報が詰まっているからです。ということは、社会が高度になればなるほど人工知能兵器が有効な兵器になるということです。

つまり、人工知能兵器の需要は非常に高く、今後もその需要は増加するということです。

 

人工知能兵器つまり自律型兵器の需要が高いということは、開発者の前には莫大な利益がぶら下がっているということです。結果として、開発競争が激化する。このあたりについて、オープンレターでは以下のように述べられています。

軍事大国が人工知能兵器開発に突き進みはじめた場合、世界的な軍事競争は事実上不可避となります。そして、この技術的軌道の終点は明らかです。自律型兵器は未来のカラシニコフ銃となる。核兵器と違って、それ(自律型兵器)に高価であったり入手難易度の高い素材は不要です。つまり、すべての主要な軍事的組織が大量生産できるほど安く、普遍的になるのです。ブラックマーケットに並び、テロリストや民衆を効率的に統制したい独裁者、民族浄化の実行を願う部族軍長などのもとへ流れるのも時間の問題です。

 

人工知能兵器の実現と氾濫が社会を混沌へ陥れることは誰が見ても明らかでしょう。しかし、人工知能兵器を実現させるテクノロジーは否応なしに発展します(人工知能は軍事に限定されず汎用性の高いテクノロジーだからです)。需要もあります。そこで、人類はこの新しい兵器について早期に価値判断を下す必要があります。価値判断を下し、コンセンサスを形成して、ようやく具体的な対策がはじまるからです。

ということで、最後に、人工知能兵器競争についてオープンレターで述べられている結論とイーロン・マスクの判断をご紹介して終わりにしたいと思います。繰り返しになりますが、イーロン・マスクの署名入りのオープンレターです。つまり、彼も同じ判断を下したということですね。

私たちは軍事的な人工知能兵器競争は人類の利益にならないと考えます。

人工知能は様々な用途において人類に大きな利益をもたらすポテンシャルを秘めていますし、この(人工知能の)領域のゴールはそうであるべきです。軍事的な人工知能兵器競争は良くない考えだというのが(私たちの)結論です。

軍事的人工知能兵器競争に反対の方はこちらのオープンレターを署名を。

 

参考

futureoflife.org

www.popularmechanics.com

time.com

www.news.com.au

money.cnn.com

www.ted.com

elongeek.hatenablog.com



スペースXの打ち上げ失敗の原因はパーツの欠陥と慢心だった

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6月28日、イーロン・マスクの誕生日に打ち上げられたスペースXのファルコン9は打ち上げから139秒後に爆発してしまいました。

打ち上げ失敗のあと、スペースXを率いるイーロン・マスクツイッターで爆発の原因について暫定的な回答を近々発表すると宣言。現在も調査は続けられていますが、今回、イーロン・マスクは、ロケットの上昇中にヘリウムボトルを固定する支柱が壊れたことが爆発の原因である可能性が高いと電話会談で語りました。現在のところ、それ(原因が支柱であること)以外に説得力のある説明が見当たらないとのことです。

 

ファルコン9はどのように爆発したのか

ヘリウムボトルを固定する支柱はスチール製で長さ約60センチメートル。ロケット二段目の液体酸素タンク内に備えつけられていました。ボトル内のヘリウムは極低温・高圧で保存されています。ロケットの飛行で燃料が消費されるにつれてヘリウムが推進剤のタンクへと送られます。ヘリウムをタンクへ送ることで圧力をかけ、タンクの構造的安定性の維持に貢献するというわけです。

打ち上げ後、支柱が外れたことでヘリウムボトルが飛び出して液体酸素タンクに干渉しました。この原理はスイミングプールの水面に膨らんだビーチボールが(水中から)飛び出してくるのと同じだとイーロン・マスクは言います。さらに大量のヘリウムが液体酸素タンクに流れ込み、結果的に液体酸素タンク内の圧力超過が発生してロケットの爆発へとつながりました。

支柱にトラブルが発生したのはまだロケット一段目の燃焼中でした。つまり、発生箇所である二段目エンジンはまだ点火していなかったということです。ファルコン9のような二段ロケットは一段目エンジン燃焼終了後に一段目を切り離し、二段目エンジン点火というシーケンスを辿ります。二段目エンジンの点火に至っていなかったので、二段目の推進剤タンクは満タンだったということです。高い圧力がかかった状態のタンクにヘリウムが流れ込みさらに圧力を高めてしまったわけですね。

 

ファルコン9の爆発を引き起こした支柱

スチール製の支柱は重さ約4・5トンに耐えれるはずでしたが、問題があったとされる支柱はその5分の1にあたる約0・9トンで壊れてしまいました。イーロン・マスクは「本来このレベルの力で壊れるようなものではない」、「製造に問題があったのだろうが、外から判別はできない」とコメント。

スペースXがおこなった素材分析の結果、スチールの粒状構造に欠陥が発見されました。正しく鋳造されなかったのでしょう。支柱は外注によるものでスペースXで製造されたわけではありません。スペースXではロケット、エンジン、カプセルなどを自身の工場で生産していますが、様々なパーツの供給を多くの製造業者に頼っています。今後、支柱の外注先を変更し、スペースXにて個別にテストをおこなうことになるそうです。

今回の打ち上げ前にも支柱の強度を計るテストは実施されていましたが、地上のテストでは上昇中のロケットの状況を再現できないため、支柱の強度不足を事前に察知することは不可能だったとのことです。

 

宇宙船ドラゴン

ファルコン9は国際宇宙ステーションへ貨物を運ぶために宇宙船ドラゴンを搭載していました。じつは、ドラゴンはロケットの爆発に巻き込まれることなく、爆発後も地上管制へデータを送り続けました。最終的には大西洋の海面へ激しく落下することになりましたが、ドラゴンはほとんど元の形状をとどめたまま海底へ沈んでいる可能性が高いとのことです。

ドラゴンには国際宇宙ステーションへの物資補給ミッションの完了後、地球へ帰還できるようにパラシュートが装備されています。もしドラゴンに搭載されていたソフトウェアが早期にパラシュートを開かせていたら、ドラゴンは爆発から無傷で生還できたようです。「非常に悲しいことだ。ほんのわずかに異なるソフトウェアだったらドラゴンは無事だっただろう。」イーロン・マスクはそう語りました。今後はそのようなソフトウェアがドラゴンにインストールされるそうです。

 

打ち上げ失敗の影響

スペースXの次の打ち上げは9月以降まで延期。今回の打ち上げ失敗によるスケジュールの変更でスペースXが被った損害は数百億円にのぼるとされています。また、火星を目指して設計されるファルコンヘビーの打ち上げ時期にも影響を与えたとのことです。

NASAとの有人宇宙飛行契約を結んでいるスペースXは有人宇宙船ドラゴンを開発しています。イーロン・マスクによれば、有人宇宙船には非常事態の際の脱出システムが備えられているので、今回のような爆発が起きた場合でも無事に帰還できたはずとのこと。ちなみに、有人宇宙飛行のスケジュールの遅れはないそうです。

 

スペースXの慢心

2015年6月まで、ファルコンロケットは18回連続で打ち上げに成功していました。そして、スペースXの社員は創業初期の500人から4000人へ。「現在、非常に多くの社員は成功しか目にしていない。成功だけを見てきたら、失敗を恐れなくなってしまう。」イーロン・マスクは言います。

過去7年間ではじめての失敗となった今回のファルコン9の爆発。イーロン・マスクは毎回打ち上げ前に全社にEメールを送信し、社員に打ち上げを延期すべき事由があれば自分に教えてくれるように頼むそうです。彼は「偏執的だと思われていることを理解している」そうですが、今回の失敗で「すべての社員がロケットを成功裏に軌道へ乗せることがいかに難しいことなのかわかってくれたと思う」、「重要な教訓となった」と語りました。

 

参考

www.space.com

www.sci-tech-today.com

www.coastreporter.net

www.themarketbusiness.com

www.planetary.org

Support strut probable cause of Falcon 9 failure | Spaceflight Now

偉大な科学者の名を冠するもう1つの電気自動車会社

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イーロン・マスクがCEOを務める電気自動車会社テスラモーターズ。会社の名前は天才科学者のニコラ・テスラに由来します。イーロン・マスクは約1億円をニコラ・テスラ博物館に寄付していますし、テスラモーターズが使っている技術の基礎を築いたのもニコラ・テスラテスラモーターズニコラ・テスラの名前を冠するのも納得できますね。

テスラモーターズシリコンバレーの気風を備えた新しい自動車会社として既存の大手自動車メーカーに正々堂々技術で勝負を挑み、電気自動車の市場ではトップクラスの実績をあげてきました。

じつは最近、そんなテスラの軌跡を追うようなもう1つの新しい電気自動車会社がシリコンバレーに登場して話題になっています。その名もファラデー・フューチャー。偉大な科学者であるマイケル・ファラデーをその名に冠する謎に包まれた会社です。ファラデー・フューチャーのサイトを見ても具体的なことはほとんど書いてありません。ただ、このような刺激的な文章が記載されていました。

インターネットが登場する以前の世界を覚えているでしょうか。覚えていないに違いありません。すべてを変えてしまうイノベーションというものがあるのです。そして、ファラデー・フューチャーは自動車産業全体を未来へと導く存在なのです。

Faraday Future

 

シリコンバレーに蘇った2人の科学者〜ニコラ・テスラ

テスラモーターズの名前の由来となっているニコラ・テスラ(1856年7月10日〜1943年1月7日)は発明王エジソンの最大のライバルとして有名です。電流戦争と呼ばれる送電システムをめぐる争いで両者は激しく剣を交えました。ニコラ・テスラは交流送電、エジソンは直流送電を主張。ナイアガラの滝を利用したテスラ発電所がターニングポイントとなり、結果はニコラ・テスラに軍配が上がりました。現在でもほとんどの国々で交流送電が採用されています。

ニコラ・テスラは奇行が目立ちマッド・サイエンティストとしても名を馳せていますが、その能力・実績は凄まじく、現在では磁束密度の単位としてテスラの名が使われています。8ヶ国語を操り、様々な分野に精通していました。

 

シリコンバレーに蘇った2人の科学者〜マイケル・ファラデー〜

マイケル・ファラデー(1792年9月22日〜1867年8月25日)はイギリスの自然哲学者(化学・物理学者)です。電磁気によって動作する装置である電動機を発明して人類の文明の発展に大きく寄与しました。電気を使ったテクノロジーの発展は彼の業績によるところが大きいのです。

ファラデーは学校にほとんど通うこともなく、高度な数学の知識がないにもかかわらず、人類にもっとも影響を与えた科学者の1人だと言われています。科学者ではありますが、その出自のため不遇な扱いをうけた人生でした。

ファラデーは数々の実験によって偉大な発見を繰り返す徹底した実験主義者でした。ファラデー・フューチャーのサイトでは彼についてこのように言及しています。

アルベルト・アインシュタインはマイケル・ファラデーの絵を(アイザック・ニュートンと共に)壁にかけて革新のためのインスピレーションとしていました。電磁気モーターと電気化学バッテリーの父として、ファラデーは圧倒的に時代に先駆ける男だったのです。

Faraday Future

 

ファラデー・フューチャー

テスラモーターズが科学者ニコラ・テスラの名を冠してシリコンバレーに颯爽と登場した電気自動車会社であるように、ファラデー・フューチャーも科学者マイケル・ファラデーの名を冠してシリコンバレーに登場した新しい電気自動車会社です。

現在のところその全貌は謎に包まれていて詳しいことはわかっていません。ただ、ファラデー・フューチャーが騒がれている理由は彼らが引き抜いた人材の豪華さにあります。たとえば以下のような人物がファラデー・フューチャーで働いているのです。

Nick Sampson:前テスラモデルSのエンジニア

Richard Kim:前BMW i8、i3のコンセプトデザイナー

Pontus Fontaeus:前ランボルギーニフェラーリ、ランドローバーのインテリアデザイナー

Page Beermann:前BMWのデザイナー

Porter Harris:前スペースX社員

現在は200人のスタッフが在籍していて、2016年までに300人まで人数を増やす予定とのこと。また、彼らの最初の自動車は2017年に完成予定だそうです。上記の人材を引き抜ける魅力がある会社ということでかなり期待されています。

 

イーロン・マスクにとってのファラデー・フューチャー

同じシリコンバレー電気自動車会社としてテスラモーターズのライバルになりそうなファラデー・フューチャーですが、イーロン・マスクはどのように受け止めるのでしょうか。

じつは、ファラデー・フューチャーが志向している電気自動車は高級車だそうです。テスラモーターズが狙っているのはマスマーケット。つまり、庶民的な電気自動車を目指しています。テスラの戦略として現在は高級車を生産していますが、イーロン・マスク電気自動車市場の拡大に熱心であり、あくまでもターゲットはマスマーケットなのです。

理由は人類を化石燃料依存から脱却させるために電気自動車社会の到来を加速させることがテスラモーターズの存在意義だから。そのために、イーロン・マスクテスラの特許も開放して電気自動車会社設立を促しています。

つまり、ターゲット層も異なるうえに、そもそも電気自動車会社が増えることは大歓迎なイーロン・マスクなので、きっとファラデー・フューチャーにたいしてもポジティブな思いを抱いているはずですね。

 

まとめ

イーロン・マスクにとって重要なのはガソリン車対電気自動車の戦いのほうでしょう。イーロン・マスク電気自動車全般を応援しているのです。2015年7月17日、イーロン・マスクテスラのサイトで電気自動車のコストについてこのように述べています。

多くの国で、クリーンなエネルギーを使う自動車への補助金が給付されています。つまり、電気自動車のコストはそれだけ下がっているのです。たとえば、アメリカではモデルSの価格は補助金を加味すると750万円ほどになります。(※)また、ガソリンを購入しなくてよかったり、電気自動車にかかる手間が少なかったりするため、年間25万円は節約できます。平均的に言えば、5年間で125万円の節約になるのです。ガソリン車対電気自動車の評価において、この経済的優位性はしばしば見過ごされています。

Three Dog Day | Tesla Motors

補助金を考慮しないテスラモデルSの価格は870万円

しばしば高コストがネックとされる電気自動車ですが、補助金や維持費なども考えてガソリン車と対比させてほしいということですね。電気自動車は正当な評価を受けるべきだとイーロン・マスクは言っているわけです。

環境問題への世界的な取り組みから、電気自動車への流れは確実なものとなってきています。イーロン・マスク率いるテスラモーターズが先頭となり、新しく登場する電気自動車会社を引っ張っていく姿が頼もしい限りです。

 

参考

Faraday Future

www.bmwblog.com

wot.motortrend.com

www.theverge.com

www.forbes.com

www.businessinsider.in