イーロン・マスクのすすめ

最高の男、イーロン・マスクについてのブログ

テスラモーターズの発表 ~バッテリー事業のはじまり~

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テスラモーターズの発表

 本日テスラモーターズから新しい製品の発表がありました。イーロン・マスクの謎めいたツイートなどでいやが上にも期待感が高まっていた今回の発表でしたが、各所で予想されていたとおりテスラモーターズの新製品はバッテリーでした。家庭用、ビジネス用、そして公共事業にも使える大容量のバッテリーです。発表された製品は2つ。1つはPowerwallと呼ばれる家庭用のバッテリー。サイズは横0.9メートル、縦1.2メートル、幅15センチメートル。価格は7kWhモデルが約36万円、10kWhモデルが約42万円です。僕が調べた感じだと従来の蓄電池の価格は7kWhで安くて60万円、通常は80万円以上していました。Powerwallは従来の蓄電池の半額ほどですね。すごいコストダウンです。もう1つはPowerpackと呼ばれるバッテリーです。これがビジネス用で、公共事業規模でも使える超大容量バッテリーです。複数の100kWhのバッテリーブロックで構成され、500kWhから10MWhもしくはそれ以上の容量を誇ります。

 

イーロン・マスクの考えるシステム

 バッテリー事業イーロン・マスクのスケール、ストーリーで考えてみましょう。イーロン・マスクはバッテリーを「ミッシングピース」と呼んでいます。どういう意味なのか。イーロン・マスクは現在3つの事業をおこなっています。テスラモーターズでは電気自動車、スペースXではロケット、そしてソーラーシティ(彼のいとこが経営してますが、イーロンは会長です)でソーラーパネルを作っています。つまり、宇宙、交通機関、エネルギー(発電)に関する事業ですね。これらの事業はそれぞれが独立しているわけではなく、大きな1つのシステムを形成しています。イーロン・マスクがインタビューなどで常々話していることですが、人類のために何が重要なのか、そういう視点で構築されたシステムです。具体的に説明しましょう。

 人類にとって何が重要なのか。答えは強力な生存戦略です。そして、最も強力な生存戦略の1つが、多惑星に居住する種となること。これもイーロン・マスクがよく言っていることです。これは隕石の衝突などの全地球的なカタストロフィーによって、一瞬にして地球が居住不可能な星になるということが十分起こり得るからです。地球の歴史を振り返れば決して珍しいことではありません。

 スペースXの目的は、上記の戦略の通り、火星への人類の入植です。そのゴールに向けてロケット開発が進められています。しかし、当然のことですが、火星に到達して人類が居住できるような環境にするには時間が必要です。その間、地球を文明発展の速度を最大限キープできる環境にしておく必要があります。そして、文明の発展速度を維持するよう地球環境を保全するには、地球温暖化を防止するのと同時にリミットのある化石燃料を有効活用しなければなりません。これがテスラモーターズとソーラーシティの目的です。交通機関と発電の2つで化石燃料の消費を抑えるのです。テスラモーターズでガソリン車から電気自動車に、ソーラーシティで火力発電から太陽光発電に切り替える。CO2排出も抑制でき、化石燃料も使わない。太陽光発電で生まれた電気は電気自動車に使えるので、非常に良いサイクルが誕生します。太陽のエネルギーは膨大です。化石燃料も太陽エネルギーの蓄積によるものと言えますが、文明の発達によって僕らはもっと直接的に太陽エネルギーを利用できるレベルに到達しました。では、なぜこの文脈においてイーロン・マスクはバッテリーを「ミッシングピース」と呼ぶのか。それをこれからご説明します。

 

太陽光発電の問題

 イーロン・マスクはソーラーシティで太陽光発電を普及させていますが、現在のところ従来の発電システムに比べるとその普及率は決して高いとは言えません。太陽光発電には安定的な電力供給ができないというデメリットがあったからです。これは根本的な問題です。なぜかと言うと、不自由なく利用可能な発電にはリソースの安定的な供給が不可欠だからです。従来の発電所だと、石炭や天然ガスウラン同位体を追加注文することで供給力を確保できますね。何の問題はありません。しかし、自然とは残酷なもので、僕らは太陽や風をコントロールすることはできません。夜だったり、曇っていたり、風が吹かなかったり。供給は不安定なのです。そして、電力の供給と需要のバランスが取れない限り、発電は上手く機能しません。発電量が少なければ停電につながりますし、発電量が多すぎれば送電網などの設備の損傷をまねきます。じつは2013年の時点でドイツはこの問題に直面しています。ドイツの太陽光発電能力は近年大幅に上昇していて、12時から14時までの全国の電気の需要を満たすレベルにありました。しかし、上記の理由から、需要を超えてこれ以上太陽光発電を推し進めることは、日中の発電に恒久的な不安定をもたらすだろうとのことで、太陽光発電の普及に待ったがかかっていたのです。

 

バッテリーのコストダウン

 太陽光発電の問題を解決するには2つのやり方があり、1つは小規模発電にして需要と供給のギャップをなくすこと。そしてもう1つがバッテリーです。蓄電によって供給を安定させることができるわけです。

 太陽光発電風力発電は実際ほとんど蓄電能力を持っていませんでした。発電しているときにしか電気を利用できないのです。もちろんこれには理由があります。1番大きな理由はコスト。大容量の蓄電が可能なバッテリーは非常にコストがかかります。つまり従来の発電システムに対してコスト面で競争優位性を失っていたから、太陽光発電はそこまで普及していないということですね。

 テスラモーターズが発表したバッテリー事業で最も注目すべき点はまさにここ。どのくらいバッテリーのコストが下がるのか、でした。そして、実際にバッテリーのコストは大幅に下がって、従来の蓄電池の半分になりましたね。素晴らしいです。それに、バッテリーのコストダウンの方法が、テスラモーターズが誇る最新のテクノロジーによるのではなく、バッテリーの大量生産であるというところもポイントです。エジソンが電球を発明したとき、花瓶型のガラスは非常に高価で作製に時間がかかるものでした。1人が1、2個の電球を作るのに数時間かかっていたそうです。ところが、数百万個の電球が必要になったとき、電球制作のプロセスは工業化され、電球1個あたりのコストは嘘のように下がりました。同じことがバッテリー生産にも言えるのです。

 

ミッシングピースの意味

 バッテリーの大量生産を達成するために、テスラモーターズパナソニックと共同でギガファクトリーという超大規模なバッテリー生産工場を建設しています。ギガファクトリーは2017年に生産を開始する予定です。ところで、バッテリーの大量生産によるコストダウンにはもう1つ重要な意味が込められています。イーロン・マスクは今回の発表で、世界中にギガファクトリーが建設されるべきだと漏らしました。これは、なにもテスラモーターズがたくさんギガファクトリーを建設しようというわけではありません。他のメーカーもギガファクトリー並の超大規模バッテリー工場を作るべきだと言っているのです。それに必要なのは長期的なプランと積極的な投資。テスラモーターズのような最新のテクノロジーが必須というわけではありません。

 イーロン・マスクテスラモーターズ電気自動車で特許を放棄したことは有名ですね。その背景には、世界全体の自動車産業電気自動車生産へシフトさせる狙いがあります。上記で述べたように、イーロン・マスクの目的は利益を上げることではなく、人類を救うこと。同じ理屈がギガファクトリーにも当てはまります。長期間にわたり大容量の電気を貯蔵できる安価なバッテリーはゲームチェンジャーとなります。太陽光発電は膨大なクリーンエネルギーを電気に変えます。まさに究極の発電です。アメリカ農務省のアールバーツのセリフで有名な「Get big or get out!」という言葉があります。これは小規模農家に、お金を借りて、土地を増やし、設備を整え、作物を増やし、農業を巨大産業にしろ!(さもなければここを出て行け!)と言う意味です。しかし、再利用可能エネルギーとバッテリーの組み合わせを考えると、新しい電力のマントラは「get small and be free」(小さくやって、自由になろう)でしょう。各家庭につながっている無数の電線は不要になります。各家庭が小さな発電施設になるのです。屋根にソーラーパネルがあり、電気はガレージの横にあるバッテリーへ蓄電される。交通手段はその電気を使う電気自動車です。CO2は一切排出されませんし、化石燃料も消費されない。このシステムが世界にインストールされたら景色は一変しますね。イーロン・マスクはすでに電気自動車を作り、太陽光発電も普及させています。残るはバッテリー。これがイーロン・マスクが言う「ミッシングピース」の意味だったのです。そして、今回の発表で2017年に「ミッシングピース」が埋まることがわかりました。2017年以降、どのような世界になるのか今から楽しみですね。

 

参考

Rethink the Grid: Personal Power Stations

Renewable Energy Storage Problem - Business Insider

www.businessinsider.com

www.valuewalk.com

learnbonds.com

www.forbes.com

business.financialpost.com

www.theverge.com