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イーロン・マスクのすすめ

最高の男、イーロン・マスクについてのブログ

イーロン・マスクが火星を目指す理由

宇宙 スペースX

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 今回はこちらの記事を紹介していきたいと思います。本当に素晴らしい記事で全文翻訳してお伝えしたいところですが、そうもいかないので印象的な箇所だけ引用しながらお話ししていきます。

www.slate.com

 一言で言うとTwitterイーロン・マスクにもフォローされているフィリップ・プレイトという著名な天文学者かつ作家兼ブロガーがスペースXの工場を見学してきた感想です。彼はイーロン・マスクから招待されて見学ツアーに参加し、ツアーの後にはイーロンと会って話をしました。そこで彼がイーロンに尋ねたのが、「火星を目指す理由」でした。じつはイーロン・マスクの「火星で引退したい」という言葉は有名で、フィリップの頭にもその言葉がありました。しかし彼はこの質問をしたことを後悔しています。それはなぜなのか。ツアーを終えて彼が得た感覚とはどのようなものなのか。非常に明快で読ませる文章です。時間がある人は辞書片手にでも読んでいただきたいくらいです。ただ、それも大変な作業でしょうし、なるべく記事の魅力が損なわれないようにご紹介していきたいと思います。

 フィリップ・プレイトは以前からスペースXに興味を持っていました。イーロン・マスクの能力も評価していて、スペースXが民間資本で作られた液体燃料ロケットとしてはじめて軌道投入を目指すと宣言したときも、できるかもしれないなと思ったそうです(多くの専門家たちは不可能だと切り捨てました)。もちろん簡単な仕事ではないですが、イーロン・マスクならやってくれるだろうと。イーロン・マスクにはPayPal売却などで得た莫大な個人資産があり、彼はその個人資産を惜しげもなくスペースXに投入していたからです。ただ、ロケット開発はお金があればうまくいくというものではないので、当初は懐疑的な気持ちもあったとか。その疑念も2008年のファルコン1の打ち上げ成功で急速に萎んでいきます。それから数年後の現在。ファルコン1を受け継ぐファルコン9は17回連続成功を達成し、打ち上げ成功率は100%。スペースXは更なる高みを目指す資格を手に入れました。フィリップはツアーの招待を受けたとき、このようなスペースXの軌跡を振り返っていたそうです。

 ツアーを前に期待に胸を膨らませていたフィリップ。実際、スペースXの工場は期待通りだったそうです。まるでウィリー・ウォンカのチョコレート工場のよう。フィリップはこう書いています。

高い天井から軌道に送られた最初のドラゴンカプセルがぶら下がっていて、大気圏再突入の際についた焦げ目も見える。近くには制作中の他のカプセルもある。すでにテストを完了した数体のマーリンエンジンが並び、次の打ち上げに向けて点検を受けていた。工場の一角には2つの大きなファルコン9のブースターが横に並んでいる。2階正面のカフェから、隣の部屋にある2つのノーズコーン(※)が見える。次のファルコンヘビーのデモフライトに使われるのだ。

※ノーズコーンとは空気抵抗を減らすためにロケット先端につけられる円錐形のパーツです。

 フィリップは工場で働く人々の雰囲気にも感心しました。非常に士気が高く、コミュニケーションは活発でプライドを持って仕事に取り組んでいる。驚くようなことではありません。スペースXは魅力的な企業であり、魅力的な企業ではこのような雰囲気は珍しくないからです。ただ、フィリップはこの時、言いようのない何かを感じていました。それが何なのか、具体的な言葉になる前にツアーは終了。フィリップはイーロン・マスクと会うために管理セクションへと移動します。フィリップとイーロン・マスクはしばらく様々なトピックについて会話を交わしました。イーロン・マスクの率直な態度が印象的だったそうです。話が火星移住計画に移ったとき、冒頭でご紹介したフィリップが自身で後悔している質問が彼の口から飛び出しました。

しばらく私たちはいろんなトピックについて話した。映画インターステラー、スペースXの歴史、火星移住計画・・・このとき、私は愚かなことを口走った。「火星がスペースXにとって長期的な目標だということは知っています」と私は余談として話し始めた。「あなたは火星で引退したいと・・・」

イーロン・マスクは顔をしかめた。

 イーロン・マスクはすぐにそれは間違いだと指摘しました。「火星で引退したい」というのはガーディアン紙が彼から無理矢理引き出したフレーズであり、イーロンの意図とは違う思惑が働いていたそうです。ガーディアン紙はイーロンから何とか印象的なフレーズを入手したかっただけ。イーロンが伝えたかったことではありませんでした。事実を知って驚きながらもフィリップは話を続けます。

「オーケー、それではガーディアン紙はかっこいいフレーズが欲しくて、実際手に入れたわけですね。しかし、これが理由じゃないとすると、理由は何なのですか?」
イーロン・マスクはためらわずにこう答えた。「人類は複数の惑星にまたがる種となる必要があります。」

 このイーロン・マスクの明確な答えを聞いて、フィリップの思考は再形成されます。フィリップ自身、過去に何度もこのことについて書いてきたのです。たった1回の全地球的なカタストロフィーで人類は滅びてしまう。宇宙開発はそんなカタストロフィーに対する有効な対抗手段の1つ。現代ロケット工学の父コンスタンチン・ツィオルコフスキーはこう言います。「地球は人類のゆりかごである。しかし、ゆりかごの中で一生を終えることはできない。」

 火星移住計画はイーロン・マスクにとっては至極当たり前の発想です。ですが、世間では非現実的なアイデアだと受けとめられています。しかし、フィリップの後ろに広がる巨大な工場には、イーロンが語っていることは決して途方も無い夢なんかではないという確信が存在していました。この瞬間、ツアー中にフィリップが感じた形容しがたい感覚が突如として明確な形を取りはじめました。スペースXで働く人々が抱いているプライドは、単にクールなことをやっているという類のものではなかったのです。それは極めて重要な仕事に取り組んでいるというプライド。しかも一般的で曖昧な重要性などではなく、大詰めの段階における決定的で具体的な重要性でした。彼らは人類の生存エリアを広げるために働いているのです。人類を複数の惑星にまたがる種にするために。

 スペースXの火星移住計画を過小評価してバカなことだと一蹴することは簡単です。しかしスペースXの工場にいるフィリップの目には具体的で現実的、本当に達成可能な計画として映りました。

この時、私は最初の質問がいかに不適切だったのか悟った。イーロン・マスク個人が火星に行きたいから火星を目指すわけではない。人類を火星へ送るために彼は火星を目指すのだ。

それは、私にはとても良い考えに思えた。

数日後、コロラドに戻った私は、日没後にポーチへ出て西の空を眺めた。金星が灯台のように魅力的に輝いている。そのすぐ下、空だと近く見えるが本当は遥か彼方にあるのが火星だ。その光は鈍い赤色で金星に比べるとはるかにおぼろげ。しかし、私の目は金星ではなく火星に釘付けになっていた。

 フィリップは最後に一体誰が最初に火星へ足跡を残すのかという思いをしたためてこの記事を終わらせています。

 いかがでしょうか。フィリップ・プレイトという人間を通してイーロン・マスクとスペースXが取り組んでいることの重大さが伝わってくると思いませんか。繰り返しになりますが、彼は天文学者です。常に宇宙について考えている人だからこそ感じるリアリティーと感傷が見事に文章にあらわれていました。世界中の様々な人々が様々な思いでスペースXの打ち上げを見守っているんですね。次回の打ち上げも楽しみです。