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イーロン・マスクのすすめ

最高の男、イーロン・マスクについてのブログ

スペースXの再使用可能ロケットへ向けた挑戦と失敗

スペースX 宇宙 ニュース

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 本日4月15日にスペースXがファルコン9を打ち上げました。ファルコン9の打ち上げは17回目で、今回の17号機でも無事に打ち上げは成功。17回連続の成功です。いつものようにイーロン・マスクTwitterで実況してくれてました。

打ち上げ3分前。

打ち上げ!

打ち上げ成功。しかし、ロケット着陸は激しすぎて再使用不可。

 

 ロケット打ち上げ成功とロケット着陸失敗。どういうことなのか見ていきましょう。

 

打ち上げの目的

 今回の打ち上げの目的は大きく2つ。補給機ドラゴンを国際宇宙ステーションISS)へドッキングすることと、ファルコン9のファーストステージを地球に着陸させることです。打ち上げ自体は何の問題もなく成功しました。順調にいけば17日にドラゴンはISSとドッキングする予定です。運ばれる物資のなかにはエスプレッソマシーンもあるそうです。イタリア人宇宙飛行士のために無重力仕様に設計された特別なエスプレッソマシーンとのことなので一度見てみたいですね。

 チャレンジとなったのはファーストステージの着陸でした。しかし、残念ながらチャレンジは失敗に終わってしまいました。ファーストステージの着陸は3度目の挑戦で、1回目は着陸ブースターの作動液が切れてしまったことが原因で、ファルコン9のファーストステージは海に浮かぶロケット回収プラットフォームに激しく衝突。2回目は天候が悪く、洋上プラットフォームが定位置につけずファーストステージの着陸を断念。2度の失敗を経て今回3度目の挑戦という運びになりました。イーロン・マスクは事前に成功率の低さをツイートしてましたし、うまくいけばとんでもない事だけど難しいだろうなぁといった感じで見守っていましたが、やはり厳しい結果となってしまいましたね。でも洋上プラットフォームへの軟着陸自体は成功したようです。着陸後、横滑りする形でそのままファーストステージは転倒してしまい、再使用可能な状態での回収とはなりませんでした。しかし、ロケットが垂直着陸する様子は圧巻の一言。ご覧ください。

 

www.youtube.com

 

ファーストステージ着陸の目的

 ファルコン9のファーストステージを着陸させる目的はただ1つ。ロケットの再使用のためです。そして、ロケット再使用の目的は2つあって、コストダウンと打ち上げペースの向上です。現在大型の再使用可能ロケットは存在しません。イーロン・マスクが常々言ってますが、宇宙事業においてロケット再使用は非常に重要です。ロケットのファーストステージは切り離しまでのわずか10分の燃焼で燃料を使い果たします。そのわずかな間の燃焼が大事なのですが、それでも手間と時間とお金をかけて作ったロケットを10分間の燃焼で廃棄するのはもったいないと思いませんか。ファルコン9のファーストステージには9つもエンジンが載っているのです。1回のロケット打ち上げにかかる燃料費は約2500万円ほどで、ファルコン9の製造には約72億円かかっているそうです。ロケット製造コストに比べたら燃料コストなんて小さいもの。この72億円の製造コストを削減して2500万円の燃料費(とメンテナンスコスト)で打ち上げができるならすごいコストダウンになりますよね。それに最初からロケットを製造する必要がなくなるので、当然次の打ち上げまでの間隔も短くできます。これによって打ち上げペースも上がります。この2つの目的のために、スピースXはファルコン9のファーストステージの着陸に挑戦し続けているのです。

 僕らが利用する交通機関はすべてが再使用可能です。自動車、電車、飛行機、どれも1回しか利用できない乗り物だったらこんなに普及してません。ロケットが再使用可能な乗り物になるということは、地球上の交通機関と同じレベルの宇宙地球間の交通機関を手に入れるということです。再使用可能ロケットを実現できたら宇宙ステーションや月面基地などへの物資補給を加速させ、ミッションのサイクルが短くなり、人工衛星の打ち上げだって増えます。宇宙は身近になり、その効果は様々な分野に波及していくでしょう。そして、イーロン・マスクの究極の目的である火星移住計画へとつながっていくのです。

 

再使用可能ロケットの難しさ

 再使用可能ロケットのメリットは上記のように非常に大きいのですが、実現もまた非常に困難です。実際、スペースXは3度の失敗を経験し、再使用可能をコンセプトに設計されたスペースシャトルは打ち上げコストが予想よりはるかに高くついたことや安全面を理由に引退してしまいました。

 再使用可能ロケット開発にとって大きな問題となる1つの公式があります。それはツィオルコフスキーの公式と呼ばれるもので、ロケット設計のコアとなるロケット推進に関する公式です。簡単に言うと、ロケットを重くしたら、ペイロード(積載物)の量を減らさないといけないよって公式です。通常、ロケットは打ち上げ後に燃料を使い切った燃料タンクとエンジンを切り離して重量を軽くして効率的に推進するよう設計されています。切り離されたファーストステージは海へ落下するのですが、大気圏への再突入でボロボロの状態になってしまいます。なので、大気圏再突入に耐えられるようにロケットを強化しようという発想がでてきますが、ツィオルコフスキーの公式から、それをやると大きなペイロードが積めません。耐久力向上は重量増加を意味するからです。いくら再使用可能になったところで、分割した小さなペイロードを何回も打ち上げる必要があるなら結局コストがかかり、再使用可能ロケットもメリットがなくなってしまいます。それに、ロケットは可能なかぎり軽量化を施さなくてはならないので、着陸用の装備の重量もネックになっていました。実際、スペースシャトルも翼の重量が非常に重くなってしまって期待通りのパフォーマンスには至りませんでした。そこでスペースXは自身の強みである素材科学力を活かして軽量で丈夫な素材を使ってロケットを設計し、ツィオルコフスキーの公式を乗り越えようとしています。

 ただ、専門家の話ではたとえ再使用可能ロケットが実現できたとしても、年数十回の打ち上げペースを維持しないとコストダウンにはつながらないそうです。エンジンのメンテナンスコストの問題ですね。この問題をクリアするには技術力の向上だけではなく、いかに多くの打ち上げの契約を取ってこれるかといったマーケティング力も必要になりそうですね。それに再使用可能と言っても何回そのエンジンを再使用できるのかも重要で、ファーストステージ軟着陸を成功させたとしてもまだまだ困難は続くみたいです。

 

ファーストステージ着陸のシナリオ

 再利用可能ロケットのメリットと実現の難しさについてお話してきましたが、ここからは実際に今回の打ち上げがどのようなシナリオで進められたのか見ていきましょう。まず、こちらは今回の打ち上げからファーストステージ着陸までのシナリオです。

 1.打ち上げ

 2.低軌道にてファーストステージ切り離し

 3.再突入へ向けて速度を落とすため、エンジンの燃焼(3回)

 4.舵取りのため4つのフィンが展開

 5.着陸へ向けて着陸用レグが展開

 6.洋上プラットフォームへ垂直に着陸 

 肝となるのは洋上プラットフォームへの垂直軟着陸です。プラットフォームは海の上に浮かんでいますが錨を下ろしているわけではなく、強力なスラスターを使って位置をキープします。そこに切り離されて大気圏再突入を終えたファルコン9のファーストステージが降下してきくるというシナリオでした。これは非常に難易度の高いミッションで、ファルコン9から見たら洋上プラットフォームは本当にちっぽけなターゲットです。その波に揺れる小さな的へ向けてピンポイントに、しかも15階建ビルに相当する高さのファルコン9を垂直に着陸させなければならないのです。達成できたらすさまじい芸当と言えるでしょう。今回は残念ながら失敗に終わりましたが、スペースXは究極的には地上にファーストステージを着陸させ、最速で次のミッションへ向けてエンジンをメンテナンスしていくことを考えています。

 再使用可能ロケットの開発ですが、現在のところスペースXが先頭を走っています。しかし、ライバルは続々と登場してきており、例えばボーイング社とロッキード・マーティン社の合弁事業であるユナイテッド・ローンチ・アライアンスでもエンジンユニットの回収、再使用を計画しているそうです。エンジンユニットにパラシュートを装備させて、切り離し後の降下中に特殊装備のヘリコプターを使って空中でエンジンユニットを回収しようというプラン。再使用可能ロケットのメリットは大きいので今後も様々な競争相手が現れてくるでしょう。しかし、スペースXは困難を乗り越え、成果を出し続けてきた企業です。私企業として史上初めて宇宙船を軌道に乗せました。国際宇宙ステーションへカプセルやカーゴを送った最初の企業でもあります。きっとファーストステージ軟着陸も成功させてくれることでしょう。イーロン・マスクはファーストステージのプラットフォームへの軟着陸こそスペースX社のアイデンティティーになると語っています。他のライバル企業に対して大きな差別化要因となると強調しているのです。再使用可能ロケットの実現は宇宙事業を飛躍させることは間違いありません。次の挑戦が本当に楽しみです。

 

参考

business.financialpost.com

www.cbc.ca

www.businessspectator.com.au

www.businessinsider.com