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イーロン・マスクのすすめ

最高の男、イーロン・マスクについてのブログ

マンモス復活、「できる」か「すべき」か。

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 先日イーロン・マスクがこんなツイートをしていました。

 

 

間違ったことかもしれないが、マンモスの姿は本当に見てみたい。

  

 (記事をものすごく簡単にまとめると以下)

  

・ファン・ウソク(韓国の生物学者)がマンモス復活を目指してマンモスの完全な遺伝子を求めているようだ。

  

・ファン・ウソクはヒトの胚性幹細胞(ES細胞)に関する論文の捏造で知られ、今ではマスコミ嫌いになっていて彼の真意を知るのは難しい。

 

・マンモスのクローンをつくるのはいまや技術的な問題というより倫理的な問題である。

 

  

 非常に興味深い話題ではないでしょうか。さっそくイーロン・マスクの言葉やニュース記事の意味を探ろうといろいろ調べてみました。調べていくとマンモス復活をめぐるいろんなことがわかってきました。そこで、今回はマンモス復活、「できる」か「すべき」かというテーマでやりたいと思います。

 

 

 

 マンモスとは

 

 本題に入るまえに、まずはマンモスについてちょっと説明しときます。皆さんご存知のようにマンモスは400万年前に誕生したゾウに似た動物です。特徴は巨大な牙で、種類によっては5.2メートルもの長さがあるそうです。身体も非常に大きく、体長は最大の陸棲動物であるアフリカゾウの3.2メートルに対して、なんと4.8メートルもあり、その高さはおよそキリンと互角の勝負です。動物園でキリンの顔を見上げたことありますよね。あそこがマンモスの背中のてっぺんあたりだと想像してください。すさまじい大きさです。そしてゾウと同じで知能が高く社会的な動物と考えられています。本当に魅力的な生物です。

 

 

 マンモスが絶滅したのは約1万年前だと言われていますが、シベリアとアラスカ沖の島々では3千年前まで生きていたそうです。その頃エジプトではピラミッドが建設されていました。そう考えるとけっこう最近までマンモスは生きていたんですね。

 

 

 絶滅の原因は諸説ありますが、氷河期末期の気候変動というのがもっとも有力な説です。温暖化が進み、森林地域が北上してきたため、マンモスの生息域である草原が減少したと考えられています。もう1つの有力な説はヒトによる狩猟です。僕ら人類がマンモスを絶滅に追いやってしまったのかもしれません。そして、人類がマンモスを復活させようとしているのは不思議な話です。また、伝染病が原因だったとも考えられています。

 

 

 

 

マンモス復活、「できる」か。

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 さて、ここからが本題です。まずはそんな魅力あふれるマンモスの復活が「できる」かどうかについて話していきます。マンモス復活のカギとなるテクノロジーがあるんですが、みなさんご存知でしょうか。クローン技術です。クローン技術とは有性生殖(交尾)をおこなわずにテクノロジーの力で(クローン)生物を誕生させる技術です。簡単に言うと生物の細胞をいじって生命を作りだす技術ですね。詳しく説明していきましょう。

 

 

 

 生物の設計図

  

 まず細胞やDNAの説明からいきましょう。僕らの身体を細かく分解していくとこんな感じになります。

 

 

身体

器官

細胞

細胞核

染色体

DNA

塩基対

 

 

 説明していきますね。僕らの身体は約37兆個もの細胞が集まってできています。1つ1つの細胞には細胞核という中心的な役割をする器官があり、細胞核の中に染色体が入っています。

 

 

 そして染色体の中にDNAが折りたたまれて入っているわけです。DNAとは生体高分子と呼ばれる物質で、32億にもおよぶ塩基対で成り立ち、二重らせん構造をとっています。この章の最初のイメージがDNAです。

  

 

 塩基対とはアデニン (A) とチミン (T)、グアニン (G) とシトシン (C)の4つの有機化合物(簡単に言うと生物を構成している分子)の組み合わせです。この塩基対が32億つらなってDNAを構成しています。だからDNAは高分子(多数の原子が結合してできる巨大分子)なのです。

 

 

 僕らの身体にあるすべての細胞には細胞核があり、染色体があり、DNAがあります。つまり約37兆個それぞれの細胞がATGCの4つの情報の、32億の組み合わせを内蔵しているわけです。膨大な情報量です。そして1つ1つの細胞が、DNAにある遺伝子情報にしたがってどの器官に分化(特定の器官のための特定の細胞になること)するかを決定しています。DNAはまさに生物の設計図と言えますね。

 

 

 ちなみにDNAの情報は書籍3万冊以上の情報量に相当するそうです。この膨大な情報を解析することをゲノム解析と言います。そしてヒトゲノム、マンモスゲノムの解析はほぼ終了しています。つまり、僕らはすでに人間の設計図もマンモスの設計図も手に入れてしまっているわけです。 

 

 

 

 クローニング

 

 次にどうやってクローンをつくるのかって話をしましょう。クローニングとはクローンを作製することで、クローニングには2通りのやり方があります。1つは受精卵を使うやり方で、もう1つは体細胞を使うやり方です。マンモスのクローンをつくる場合は後者の体細胞を使う方法でやります。ちなみに体細胞を使ったクローニングの世界初の成功例は1996年も生まれたクローン羊のドリーです。有名ですね。

 

 

 体細胞とは生殖細胞卵子精子)以外のすべての細胞を指し、たとえばヒトの体細胞は2つの完全なペアとなる46本の染色体をもっています。生殖細胞の染色体の数は半分でペアにはなっていません。卵子精子の受精によって完全なペアを形成するためです。これによって母親と父親両方の性質を反映させるわけですね。

 

 

 体細胞を使うクローニングの場合、体細胞がすでに染色体のペアをもっているので、卵細胞の細胞核と入れ替えるだけで染色体は揃います。そして、その性質は体細胞ドナーと完全に一致します。この卵細胞から生まれた生物を(体細胞ドナーの)クローンと呼びます。

 

 

 体細胞を使ったクローニングのプロセスはこうです。

 

1.クローンの対象となる生物の体細胞と、同じ(もしくは近い)種の生物の卵細胞(未受精卵)を用意します。

2.卵細胞から細胞核を取りだし(除核細胞と呼ばれます)、卵細胞ドナーの遺伝情報を取り除きます。

3.電気刺激を与え、体細胞を卵細胞に融合(核移植)させます。

4.融合させた卵細胞を培養液のなかに入れて刺激、活性化させることで(有性生殖でできた受精卵のように)細胞分裂が開始します。

5.約1周間ほど細胞分裂を進ませることで卵細胞は胚まで成長します。

6.成長した胚を代理母に移植します。

7.妊娠期間を経たあと、代理母がクローンを出産します。

 

 

 

 成功例

 

 体細胞からクローンをつくるのは前述のとおり羊のドリーというもっとも代表的な成功例があります。その他に日本の理研が2008年におこなった研究で、16年間凍っていたマウスからクローンを誕生させることもできました。また、Pyrenean ibexというスペインのヤギは2000年に絶滅しましたが、スペイン政府はこのヤギをクローン技術で復活させる許可をだし、研究者たちはPyrenean ibexのクローンを誕生させました。残念ながらこのPyrenean ibexは生後数ヶ月で死亡してしまいましたが、絶滅した種を復活させることができたのは本当に驚くべきことです。これらの成功例を見るとなんだかマンモスでもいけそうな気がしてきますね。

 

 

 

 課題

 

 マンモスを復活させるにはマンモスの体細胞が必要です。つまりマンモスの身体を見つけないといけません。じつはマンモスの身体を見つけるのはそこまで大変なことではなく、シベリアでは凍ったマンモスがよく見つかります。しかもマンモスの肉を食べれるくらい新鮮な状態で見つかることもあります。

 

 

 実際、2013年にはロシアの科学者がきわめて良好な保存状態のマンモスを発見しています。4万年前のマンモスですが、保存状態はほとんど完璧。なんとその肉は血のような血液で赤く染まっているほどでした。

 

 

 しかし、いくらマンモスの新鮮な身体が手に入っても、細胞内のDNAがボロボロでは意味がありません。そして、ここが最大の問題なのですが、完璧な状態のマンモスのDNAは今まで発見されていないのです。

 

 

 というのも、DNAはとても脆く、完全な状態で保存するには低温で均質な湿度を保つ必要があります。これが難しい。前述した非常に保存状態の良好なマンモスは血液のような液体も残っていましたが、それでも完全な状態のDNAは見つからなかったのです。

 

 

 DNAの保存が難しい理由は3つあります。

 

 

酵素や凍結作用

→生物の死後、体内の酵素が細胞を壊しはじめます。なので、死後長期間経過した生物からは満足のいくDNAは採取できません。しかし凍結によってこの作用を弱めることが可能です。そして、マンモスの身体は永久凍土の中から発見されます。なので大丈夫かと思いきや、じつは凍結作用もあまりに長時間となるとDNAを破壊してしまうのですね。

 

バクテリア

→マンモスのDNAは土の中にいるバクテリアの攻撃をうけます。バクテリアは水と酸素を奪い、DNAをバラバラにしてしまいます。マンモスの塩基対はヒトよりも多く、50億ほどありますが、バクテリアによって最大でも数百の塩基対といった破片しか残りません。

  

宇宙線

→DNAは宇宙線によっても傷つきます。宇宙空間からやってくる放射線です。放射線で遺伝子が壊されるのは有名な話ですね。宇宙線に長期間さらされ続けると遺伝子が破壊されます。ちなみになぜ樹齢1000年にもおよぶ植物が無事でいられるかというと、生物は毎日傷ついたDNAの修復をおこなっているからです。生命活動が停止するとこのDNAの修復も止まってしまいます。

 

  

 とまぁ、こういった感じなので、前述した16年間凍っていたマウスのクローンを生み出すのとはわけが違うのですね。マンモスにおいては不完全なDNAしか手に入らないのが現状です。このような状況ですが、現時点ではマンモス復活へ向けた2つの方法があると考えられています。

  

 

 

 マンモスのDNAを手に入れる2つの方法

 

 まず1つの方法として冒頭でご紹介したファン・ウソクがやっているやり方があります。つまり完全なDNAを探し求めるというやり方です。ただ、上述したとおりDNAの保存はきわめて難しく、この方法はあまり現実的ではないと見られています。

 

 

 もう1つの方法はCRISPR/Cas9という方法です。これはDNAを切り離したりくっつけたりする新しいテクノロジーです。これによってたとえ最大でも数百の塩基対といったDNAの欠片しか手に入らなくてもつぎはぎでマンモスのDNAを再現できるのですね。ただ、この方法の弱点はお金がかかること。ここらへんが理由でファン・ウソクは完全なDNAを追い求める方法を取っているのだろうと言われています。

 

 

 この分野でもっとも注目を集めている科学者の1人にハーバード大学のジョージ・M・チャーチという遺伝学者がいます。この人はすでにCRISPR/Cas9を使ってアジアゾウの遺伝子を操作し、寒さに強い特徴を出させることに成功しています。蛇足ですが、一時期チャーチが人間の女性を使いネアンデルタール人を誕生させようとしているというとんでもない噂がでました。本人がきっぱり否定していますが、まぁ、そのくらい注目されている人だということです。

 

 

 アジアゾウとマンモスのDNAは非常に似ています。DNA的にはヒトとチンパンジーより近い関係で、99.4%同じDNAです。これはヒトとネアンデルタール人のDNAと同じくらいの類似性です。そういう意味ではマンモスは幸運なのかもしれません。というのも絶滅した種を蘇らせようというプロジェクトはすでにいくつかありますが、もっとも困難なことの1つに代理母となり得る種の選定があげられるからです。

 

  

 すでにマンモスゲノムの解析は終了しているので、アジアゾウとマンモスのDNAの相違点もわかっています。なので、アジアゾウの細胞から染色体を取り出し、マンモスのゲノムと異なる箇所をすべてマンモスのゲノムに置き換え、それをアジアゾウの除核した卵細胞に移植するという方法でマンモスを蘇らせることが可能だそうです。

 

 

 しかし、人工的に組み替えたゲノムを哺乳類の細胞核に移植し、それが上手く機能した例は今のところありません。もし成功すればノーベル賞もの。でも資金と時間がたっぷりあれば近いうちに実現可能と見られているんです。本当に技術的にはマンモスを蘇らせるまであと一歩のところまできていますね。

 

 

 ただ、技術的な課題をクリアするためには大量の卵子が必要となります。実験を重ねてトライ・アンド・エラーを繰り返しながら適切な条件を探っていくからです。前述のマウスの実験では数千もの卵子が使用されました。アジアゾウからそれだけの数の卵子を採取するのはものすごく困難でしょう。ここも大きな課題の1つですね。そして大量のアジアゾウが必要だということは、これからお話しするマンモス復活「すべき」かどうかという大事な問題に絡んできます。

 

 

 

 

マンモス復活、「すべき」か。

 

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 さて、ここまでマンモス復活、「できる」かについて論じてきました。技術的な面のお話ですね。そして僕らの文明はすでに絶滅した動物を蘇らせることができるレベルまで進んでおり、マンモス復活も目前にしていることがわかりました。しかし、まだ大事な論点が残っています。それはマンモス復活、「すべき」かどうか。倫理的な面です。あまり文量は割きませんが、非常に重要なお話です。

 

 

 マンモス復活、「すべき」かどうかの最大の論点はメスのアジアゾウ代理母として用いる点です。アジアゾウの妊娠期間は22ヶ月。とても長いです。実験のためにそんな長期間異なる種の子どもを宿しつづけさせるのはとても残酷な話だと思いませんか。アジアゾウはマウスと違って知能が高く社会的な動物である上に絶滅の危機にあります。しかも犠牲になる代理母は1頭ではありません。マンモスの子どもが生まれるまでに何頭もの代理母が必要となるでしょう。マンモスの復活はたくさんのアジアゾウの犠牲の上に成り立つのです。

 

 

 マンモスを蘇らせる目的はいくつかありますが、どの目的であれ本当にアジアゾウを犠牲にするほど重要なことなのか疑問が残ります。ここも調べてみたので、マンモスを蘇らせる目的と反論を1つずつ見ていきましょう。

 

 

目的:マンモスの姿を見たいから

反論:何の犠牲もない場合はいいかもしれないが、絶滅危惧種を実験に使うには貧弱な目的。

 

目的:人類の知識を増やすため

反論:なぜマンモスなのか。アジアゾウ以外の動物を代理母とするか、もしくはそもそも代理母を必要としない絶滅種でチャレンジすれば良い。実際に、上述したチャーチは絶滅したリョコウバトの復活に成功しているが、それは研究室で操作された卵子だけを用いて成し遂げられた。つまり代理母を必要としなかったわけだ。哺乳類がいいというならマウスからはじめるべきで、マンモスである必要性がない。

 

目的:生殖生物学的にゾウの知識が必要

反論:アジアゾウの繁殖プログラムは動物園でも大きな成功は納めていない。まずはそっちからやるべき。

 

目的:マンモスを復活させて、ツンドラ地帯を保全し、永久凍土を守るため。永久凍土が溶けると内蔵されているメタンガスが流出し、地球温暖化を加速させてしまう

反論:まだマンモスが絶滅したからツンドラ地帯が減少したのか、ツンドラ地帯が減少したからマンモスが絶滅したのか因果関係がわかっていない状態。仮にうまくいくとしても膨大な数のマンモスとアジアゾウが必要になる。コストやリスクを考えるべき。

 

 

 以上がマンモスを蘇らせる目的とその反論です。いかがでしょうか。本当にアジアゾウを犠牲にマンモスを蘇らせていいものか考えさせられますね。

 

 

 僕ら人類はマンモスにたいしてロマンや憧れ、罪悪感を感じるそうです。それはマンモスの絶滅の一因が人類の狩猟にあるかもしれないからでしょう。マンモスを復活させることは贖罪の一種と考えることもできます。僕らがマンモス復活という言葉に惹かれつづけるのはそういう理由からかもしれませんね。ただ、考えなしに「できる」からといって犠牲を厭わずマンモスを復活させるとどういう未来が待っているのか。もしかすると僕らがマンモスにたいして感じる憧憬や罪悪感を、将来の子どもたちはアジアゾウにたいして感じることになるかもしれないのです。つまり人類は同じ過ちを繰り返そうとしているのかもしれないってことです。

 

 

 これがマンモス復活、「すべき」かどうかというお話です。ここにきてようやく冒頭のイーロン・マスクの言葉「間違ったことかもしれない」の意味と、ニュース記事の「技術的な問題というより倫理的な問題」の意味がわかったと思います。さて、みなさんはどう考えますか。ちなみに僕はイーロン・マスクとまったく同感で、「間違ったことかもしれない」けど、「マンモスの姿は本当に見てみたい」です。これはどうしようもない衝動なのでしょう。だからこそ常に犠牲となるアジアゾウのことを意識しつづけなければならないのだと思います。これで今回のお話は終わりです。いつものように最後に参考元を貼っときますので気になる方はどうぞ。

 

 

 

 ではまた。

 

 

 

 

参考元

Can scientists bring mammoths back to life by cloning? - The Washington Post

Mammoths are a huge part of my life. But cloning them is wrong | Tori Herridge | Comment is free | The Guardian

http://genetics.thetech.org/original_news/news103

Can Scientists Clone a Woolly Mammoth? Should They? — History in the Headlines

Process of Cloning - CloneSafety.org

What is Cloning?

The Plan to Turn Elephants Into Woolly Mammoths Is Already Underway | Motherboard

Hendrik Poinar: Bring back the woolly mammoth! | Talk Video | TED.com

www.washingtonpost.com

www.wired.com