イーロン・マスクのすすめ

最高の男、イーロン・マスクについてのブログ

イーロン・マスクと人工知能について

移転しました。

人工知能

 

f:id:Elongeek:20150224204337j:plain

 

 皆さんAIってご存知ですよね?AIはArtificial Intelligenceの略で、つまり人工知能のことですが、よく映画などでコンピューターが知能(や意識)をもって人間を滅ぼそうとするとかいう設定のアレです。じつは最近AIの分野がとても注目されてます。なぜ注目されてるかというと、ディープラーニングという手法が登場したことによって大きなブレークスルーを果たしたからです。これが本当に驚異的なことなので、今回の記事はAIについて書いていきたいと思います。

 

イーロン・マスクのAIにたいする態度

 

 このブログはイーロン・マスクのブログなのでまずはイーロン・マスクの考えから。イーロン・マスクはAIについてこういうコメントを残しています。

 

 

人工知能はとても注意しないといけないものだと思います。私たちにとって最も大きな既存の危険とは何かと問われたら、それはおそらく人工知能でしょう。

私は人工知能についての国家的な、もしくは国際的な監督機関が必要なのではないかと考えるようになりました。私たちが何かとても愚かなことをしていないかを確認しておく必要があるのです。

 

I think we should be very careful about artificial intelligence. If I had to guess at what our biggest existential threat is, it’s probably that. So we need to be very careful,

I’m increasingly inclined to think that there should be some regulatory oversight, maybe at the national and international level, just to make sure that we don’t do something very foolish.

 

http://www.theguardian.com/technology/2014/oct/27/elon-musk-artificial-intelligence-ai-biggest-existential-threat

 

 

 

 そしてイーロンはAIを悪魔になぞらえてこう表現しています。

 

 

 人工知能については私たちは悪魔を召喚しているようなものです。五芒星と聖水をもった男が出てきて、悪魔をコントロールできるといった話がよくありますが、実際そんなことはありません。

 

With artificial intelligence we are summoning the demon. In all those stories where there’s the guy with the pentagram and the holy water, it’s like ? yeah, he’s sure he can control the demon. Doesn’t work out

http://www.theguardian.com/technology/2014/oct/27/elon-musk-artificial-intelligence-ai-biggest-existential-threat

 

 

 

 ようするに、イーロン・マスクはAIについては慎重派というわけです。あれだけいろんな先進的なことをしてるのに意外な気がします。しかしイーロン・マスクはAIにたいしては一貫してこういう態度を撮り続けています。

 

 

 

 そしてついにイーロンは約10億円をFuture of Life Institute(FLI)という機関に寄付することを発表しました。FLIはAIを人類にとって有意義になものにするための国際的なプログラムをおこなっている機関です。つまりイーロンはAIの(人類のための)健全な発展を目的としてすでに具体的に動き始めているわけです。イーロン・マスクが本気でAIを心配しているということですね。イーロン・マスクのAIについてのコメントはいたるところで引用されてまして、世界的にかなり話題となってます。AIについて警鐘を鳴らしているのはイーロンだけではなく、あの有名な理論物理学者スティーヴン・ホーキングもその一人。こういう知識や技術の最先端にいる人々がAIについて懸念を表明しているのを見てるとなんだか不安になってきますよね。ちょっと大袈裟な感じもしてしまいます。もちろんAIについて楽観的にとらえてる最先端の人たちもたくさんいます。たとえばGoogle会長のエリック・シュミットなどはAIを恐れる必要はないと名言してます。

 

 

 

 ではイーロン・マスクにはAIがどう見えているのか。それを探るヒントとなる彼のコメントが以下です。

 

 

 ディープマインド社のような組織に直接関わってないなら、どんなに急激にこの分野(人工知能)が成長しているかわからないでしょうね。

 

 

Unless you have direct exposure to groups like Deepmind, you have no idea how fast it is growing at a pace close to exponential

 

http://www.techtimes.com/articles/20521/20141120/elon-musks-nightmare-about-artificial-intelligence-something-seriously-dangerous-may-happen-in-the-five-year-timeframe.htm

 

 

 

 ディープマインド社というのはGoogleに買収されたことで一躍日本でも有名になったAIを研究するロンドンのベンチャー企業です。創業者が天才的で、Demis Hassabisという人なんですが、彼はチェスの天才でした。13歳のときにチェスのアンダー14で世界第二位にランキングされるほどの頭脳をもち、その後コンピューターゲームを開発するようになりました。そしてその興味は人工知能に移り、ケンブリッジ大学の博士課程で脳神経科学の研究をスタートするという異色の経歴です。彼はディープマインド社を立ち上げ人工知能の基礎研究に乗り出し、ディープマインド社は人間のようにテレビゲームをプレイできるニューラルネットワークを開発したり、人間の脳の短期記憶のメカニズムをコンピューター上で再現するなどの成果をあげました。この会社がやったことって専門家たちにとって本当にびっくりするほどすごかったらしいです。

 

 

 

 この会社が用いていた手法が冒頭で述べたディープラーニングというやつです。ではディープラーニングとは何かという話ですが、ディープラーニングを理解するためには少し人工知能の歴史を振り返る必要があります。

 

 

AIの歴史

 

 

 まず、人工知能が一応のゴールとしているのは人間の脳です。そしてディープラーニング以前の人工知能の分野では、それは達成不可能とされていました。なぜかというと、コンピューターに答えを出させるためには正しい問いを用意させる必要があったからです。正しい問いとは1+1=のような計算問題なんかですね。しかし人間の脳はそういう問いだけではなく、もっと抽象的な問いにたいしても答えることができます。自分の国にとってどういう政策がいいのかといった問いです。正解はないのかもしれませんが、政治家の人たちは自分なりの答えをだして立候補しますよね。

 

 

 

 ここで人工知能研究の第一のつまづきがありました。問いを記述できない。しかしその後この問題はある方法で解決されることになります。それはシンプルにすべての情報をコンピューターにインプットしてしまおうという解決策でした。そうすれば歴史を辿っていって過去の政策などから答えを持ってきたりできます。つまり全ての問いと答えをインプットできれば、どんなに抽象的な問いであっても答えはインプットした情報のどこかに存在するはずだという考えです。知識を全てインプットする。このプロジェクトはCycプロジェクトと呼ばれ、1984年にスタートします。

 

 

 

 しかし、このCycプロジェクトですが、一つ大きな盲点がありました。それはインプットする知識の量がハンパじゃなかったという点です。これ30年以上経つ今でも全然終わりそうにないとのことです。これで人工知能研究は収束。どうしたって人間の脳には近づけない。諦めムードが漂っていました。

 

 

 

 そんな中、ついにディープラーニングが登場します。これはようはプラトンのいうイデアというやつをコンピューターに作らせる手法です。世の中に存在する三角形はたくさんありますが、どれも完璧な三角形ではないですよね。カドが丸くなっていたり、線が曲がっていたり。でも僕たち人間は頭のなかに完全な三角形を図をもっています。それが三角形のイデア。このイデアをもとに僕らは何が三角形で何が三角形じゃないのかを判断しているという考え方です。

 

 

 

 コンピューターにこのイデアを生成するようプログラムを組んで、大量の情報をインプットしていくと、様々なイデアが生成され、それをもとに個別具体的な情報を判断していくようになります。すると認識の速度や確度があがるわけです。これは従来のやり方に比べると圧倒的な性能を誇り、人工知能(画像認識とか)のコンペではディープラーニングを用いた人工知能が圧勝してます。テクノロジーの発達によってビッグデータを扱うことができるようになったのが大きいのではないかと思います。

 

 

 

 とまぁ、つまりディープラーニングというコンピューターが学習していくための画期的な手法が誕生したことでAIの分野にいま非常な注目が集まっているわけです。日本の企業もたとえばドワンゴでは人工知能研究所というプロジェクトが走ってますし、metapsという会社は人工知能を使ったアプリ収益の支援をおこなうためにこないだ43億円の資金調達に成功しました。

 

 

 

 どちらの会社もおもしろくて、ドワンゴの川上さんは人工知能研究の目的を人工知能ではやれない分野を見極めるためと言ってました。世界のAIでバリバリやってる会社にいまから追いつくのは資金的にもノウハウ的にも厳しいので、それだったらAIでできない分野に集中しようというなんとも合理的な考え。人工知能ができないことを知るために人工知能研究所を作るというユニークな発想です。metapsの佐藤航陽さんは以前ホリエモンとの対談のなかでリアルな通貨をすべてネット上にアップしたい、そうしたらどんな世界になるのか見てみたいと語ってました。壮大な話ですが、ビットコインなどの動きをみてると不可能ではないように思えます。metapsでは人工知能にアプリの成功パターンを学習させるってサービスを提供しているようです。日本でもこういうおもしろい人たちがAIに多大な関心をもっているのが今なんです。

 

 

収穫加速の法則

 

 

 今まで見てきたように、今AIの現場はすごいことになってます。しかしもっとすごいのは未来です。イーロン・マスク関連でAIの情報を漁っていたらとてもすばらしい記事を見つけたのでご紹介したいと思います。本当は全文読んでみてほしいですよ。本当によく調べられていて論理的で楽しい記事です。この記事は皆さんの常識を変えてしまうと思います(少なくとも僕の常識は粉々に打ち砕かれました)。じつはこれの紹介がメインディッシュだったりします。つまり長々と前置きをしてしまったわけですね。ではまぁ、さっそく紹介に移りましょう。けっこう長い記事なので要点だけをピックアップしていきます。

http://waitbutwhy.com/2015/01/artificial-intelligence-revolution-1.html

 

 

 

 まず、僕たちが立っている時点をグラフであらわすと以下のようになります。

http://28oa9i1t08037ue3m1l0i861.wpengine.netdna-cdn.com/wp-content/uploads/2015/01/Edge1.png

 <WAIT BUT WHYより>

 

 

 ものすごい急速な変化の前にいるわけです。

 

 

 

 なぜそう言えるか。ちょっと思考実験をしてみましょう。たとえば今の僕らが1750年にタイムスリップしたとします。そこで一人の平凡な男を見つけ出し、現時点(2015年)に連れて帰ります。その男は現代を見てどう思うでしょうか。まだ遠距離でのコミュニケーションでは大声をだすか、狼煙を上げるかするしかなかった時代から、突如としてインターネットがあり、車が走り、数十階建てのビルが立ち並び、PCがある世界に連れて来られたわけです。きっと気絶するくらい驚くでしょう。スマートフォンなんかまさに魔法使いの道具です。

 

 

 

 さて、次にこの1750年の男が1500年にタイムスリップして、自分がやられたことを1500年の男にしてやろうと思いました。しかしどうでしょう。1500年の男は1750年に連れてこられて気絶するほど驚くでしょうか。たしかにびっくりすることはたくさんあると思いますが、気絶するほどではありません。では1750年の男が気絶するほどびっくりさせたいと思ったら一体何年まで遡ればいいか。答えは紀元前1万2千年。まだ農耕文明もなく、そもそも文明という概念もない時代です。そこまで遡れば大丈夫でしょう。紀元前1万2千年の男が1750年に連れてこられたら気絶するほどの驚くに違いありません。教会のような高い建物があり、海の上を船が行き来しているのですから。

 

 

 

 つまり、文明の進歩の速度は一定ではなく、指数関数的に速くなっているということです。紀元前1万2千年から1750年までの文明の発展と、1750年から2015年までの文明の発展はほぼ同レベル。これをthe Law of Accelerating Returnsといいます。Ray Kurzweilという人が提唱した法則で、日本語では「収穫加速の法則」。この法則はめちゃくちゃ重要だと思うんですよね。で、僕ら2015年の人間が気絶するほど驚くためには何年後にタイムスリップすればいいのか。この法則によれば、それは2030年だそうです。わずか15年後にはそのレベルの発展が起こるということです。とても信じられませんよね。

 

 

 

 なぜ僕らは「収穫加速の法則」をすぐには信じることができないのでしょう。その理由は以下の2つ。

 

 

・人間は過去の経験から判断する(30年先の未来を予想しようとすると、30年前の過去を思い浮かべてしまう。しかし「収穫加速の法則」からその30年は全く別なものと言える。)

 

 

・人間は直近の過去から判断する(テクノロジーの発展はスムーズな線を描くわけではなく、S字曲線です。ゆっくり発展→急激な発展→収束。これはAIの歴史を見ればわかるし、インターネットやスマートフォンの普及をみてもわかります。しかし直近の過去から判断してると、急激な変化を事前に察知することはできません。)

こんな感じですね。

http://28oa9i1t08037ue3m1l0i861.wpengine.netdna-cdn.com/wp-content/uploads/2015/01/S-Curves2.png

 

<WAIT BUT WHYより>

 

 

 以上の理由から僕らは理屈で考えれば信ぴょう性の高い「収穫加速の法則」を直感的に信じることができません。

 

 

 

 この「収穫加速の法則」に則って考えるとこの先僕らの未来がいかにとてつもないものなのかが見えてきます。上記の理由で目を曇らせている場合ではありません。それでは具体的にどういう変化があるのか、という話に入っていこうと思いますが、ここらで今回はストップ。メインディッシュと言っておきながらすみません。また次回かその次にでも続きをやります。きっとイーロン・マスクがAIについてあんなに心配してる理由がわかるでしょう。

 

 

 

 ではまた。